2011/01/27

映画「海炭市叙景」


 その冬、海炭市では、造船所が縮小し、解雇されたふたりの兄妹が、なけなしの小銭を握りしめて、初日の出を見に、山に登ったのです。プラネタリウムを動かしている男は、妻の裏切りに傷つき、燃料屋の若社長は、苛立ちを抑え切れず、父と折り合いの悪い息子は、帰郷しても父に会おうともせず、立ち退きを迫られた老婆の猫は、ある日姿を消したのです。 (映画「海炭市叙景」フライヤーより)


映画「海炭市叙景」(2010年/日本映画)。

夕方6時。沢山の人。コーヒーの香り。
シアターキノのフロアには次々と人が集まり、入場開始までだいぶ余裕がある段階で混み合っていた。けれど、様々な映画のフライヤーを熱心に読む人、壁に飾られた”ロケ地マップ”等をじっくり眺める人、「ああ、心から映画が好きなんだな」というような人がそれぞれに好きな時間を過ごしていたし、併設されているカフェからはコーヒーの香りが漂っていたし、窮屈な空気なんてものは、そこにはなかった。
キャスト・音楽共にずっと気になっていたのだけれど、なかなか時間が取れず、上映終了3日前というギリギリなタイミングで劇場へ足を運んだのでした。

エンドロールが終わり、照明が点き、聞こえるのは退場していく人々の足音。
私と友人が一番最後に劇場を出るまでの間、誰ひとりの声も聞くことはなかった。
18時25分上映の回を観た人々が、あの上手く言葉に出来ない空気を、きれいに配分して別れていくような光景だった。
私達も、エレベーターまでの廊下を歩いている間は何も喋らなかった。
たぶん、よくある”ここがよかった、あそこがよかった”等といった言葉を第一声にするのは何だか違うように感じていたのだと思う。

まず、鑑賞後いちばん初めに浮かんだ感想は「忘れられない」ということ。
この作品でテーマとなっている”孤独”は、きっと誰もが持っているし、自分自身も日々持っていること。そういった面ではとても身近なテーマと感じるが、忘れられない、忘れてはいけないものがある。
大きく5つに分けることが出来るオムニバス作品となっていて、どれも”目”から強い感情が受け取ることが出来た。
初日の出を前にして下を向く兄の目、妻に「偽物の星ばっかり見て」と言われた時のプラネタリウムを上映する男の目、猫を見つめる老婆の目、傷ついた息子を知る目、隣にいる父を見ずに窓の外を見る目。
それは息をのむほど、繊細な目なのです。

そして、最後のシーン。
子を宿して老婆のもとへ帰ってきた、グレ。
そのお腹を撫でる手に、「こうして人は巡っていくのだろうな」と感じた。
その気持ちは少し諦めに似ていて、一方、希望と取っても良いのかもしれない。
正直、その答えはまだ分からない。上手く説明出来るようになったその時は、私もおおきな孤独と向かい合った時なのかもしれない。

2011/01/21

ゆきあかりのまち

  



アイスキャンドルのやさしい灯りと、人々のあたたかい気持ち。
オレンジ色の夜が、今年もやって来た。

家からすぐ近くの駅で、4年前から開催されているイベント「雪あかりのまち」。
駅前から商店街へと続く長い道路の両端に、ずらりと並ぶ約300個のアイスキャンドル。
中央地帯にはテントが張られていて、あたたかい甘酒やホットカルピスが無料で提供されている。
アイスキャンドルは小さなバケツくらいの大きさで、天井が”まあるく”くり抜かれていて、そこから入り込んだ風で火がユラユラと揺れていた。

イベントを企画して下さっているのは、まちづくり協議会の方々。
そのご家族と思われる小さなこども達が列をつくり、「あまざけ、かるぴす、ありますよー」と大きな声で叫びながら道を往復している。
「しごとがえりのあなたも、どーぞ、どーぞー」と一生懸命な言葉の選び方がとても可愛らしかった。

道沿いには、携帯カメラを向けて撮影する人、三脚を持参して本格的に撮影する人、「すみません、テレビ局なのですが、撮影しているところを撮影させてもらっても、良いですか?」という面白い声、うっとり眺める人、様々な姿があった。
通り過ぎる人々はみんな笑顔で、街が優しさのケムリで包まれているようだった。

こんなに素敵な時間、一夜限りだなんて、ちょっと寂しい。
少しずつ協力の手が増えて、おおきな光になればいいなあ。

2011/01/16

totokoko labelのmixiアカウントが出来ました

私も所属している音楽とアートのレーベル「totokoko label」、mixiで新しくアカウントが出来ました。

Twitterでは掲載しきれないリリース情報やお知らせごとがキャッチ出来ます。
マイミク申請100%承認のようですので、興味をお持ち頂いた方は、ぜひ。
▼totokoko label mixiアカウント
 http://mixi.jp/show_friend.pl?id=35995341


また、現在totokoko labelではフライヤーを置いて頂ける店舗を募集しております。

            

ご協力してくださるお店がございましたら、
お店の住所、枚数、店舗情報(地域、お店の種類、店名、HP等のアドレス)
を、明記の上、
totokokolabel@hotmail.co.jpまでメールをお願い致します。

▼totokoko label  WEB SITE
http://totokokolabel.com/

べにとらくんのいるお店



いつもお世話になっている仲間達と、栄町にある中華料理店「玉林酒家」へ。
ちょこっと遅めの新年会。

外はひどい雪で、一人だけコートにフードが付いていなかった私は、マフラーをターバンの如くぐるりと巻いて道をゆきました。
見えてきたお店の外装は、「これぞ中華!」といったように華やかな赤・金がきれいでした。
今までに本格的な中華料理店に行った事がない私は、うっきうきです。

中へ入って、まず印象的だったのはメニュー表。
お店のキャラクター”べにとらくん”とその仲間達が所々に描かれています。
味のあるイラストにときめきながら、せっせと料理を選んでいきました。
エビチリ、餃子、鳥の香り揚げ、おこげのあんかけ、春巻。どれもすごく美味しかったし、みんなで食べる時間が心地良かった。
お酒も低価格で種類豊富。すもも酒、サッパリしていてこれまた美味しい。


それからは、近くの友人宅へ。
ベルギービールや、あまりの酸っぱさに口がキュウッとなるミスティック・チェリーを飲んで、気持ち良くなって快眠。
21歳になっても、真っ暗な部屋でする眠る前のトークにわくわくしてしまいます。
まるで修学旅行の夜のような。さすがに枕投げはしないけれど。
電気をバチッと消して、少々の沈黙の後の「寝た?」から始まる会話に花が咲いてしまうのは何故でしょう。
普段言えないことや、ちょっと恥ずかしい恋愛のあれこれをグイグイ引き出してしまう魔法を感じるな。

とても良い週末。
また、べにとらくんに会いに行こうと思う。

2011/01/11

ビビットカラーと白い森



「次はあのお店に行こう」だとか、「そろそろ帰ろう」だとか、
そういった確認が無くても成り立つ関係は、やはり居心地が良い。
待ち合わせ場所で合流した瞬間に、空気が”スッ”と溶ける感じに、
いつもいつも安心する。

そんな優しい居場所をくれる友人と、久々にゆっくり会うことが出来た。
今年の春まではお互い学生で、しょっちゅう映画を観に行っていた。
土曜も日曜も平日も(学校は?)、しょっちゅう観に行っていた。
彼女とは好きな物が似通っていて、いわゆるミニシアター系の映画等で
惹かれる作品が共通していた為、沢山の感覚を共有出来たりする。
今回は、映画「ノルウェイの森」を観に行った。

劇場を出てからは、”レイコ”の気持ちについて喋りながら買い物をした。
「さっぱり分からないや」 「踏み出すにはああするのが互いに良かったのかな」という、だいぶヘヴィーな会話をしながら地下食品街をゆく。


彼女と会っていると、色々なアイディアがびゅんびゅんと飛んでくる。
本人は全く自覚していないようだけれど、普通は思い浮かびもしないような質問や意見を何食わぬ顔で発言する。
冗談で「すごいね、脳の中、宇宙みたいだよ」と言ったことがあるけれど、割かし本音だったりする。
今回も、たくさん良い言葉と良い色と良い時間をもらった。

レーベルポスター、その他制作(まだ内緒っ)、しっかり頑張ろう。

2011/01/06

【音楽を絵に】クラムボン「Re-雨」 / 年越しは鳥肌実



【音楽を絵に】コーナー、更新。

今回は、クラムボン「Re-雨」という曲を描きました。
▼絵(原寸大)
http://saoriyamada.tumblr.com/post/2566440436/title-re-ame-by-saori-yamada
▼楽曲試聴(YouTube)
http://www.youtube.com/watch?v=h9wgmwjgpBo

昨年のライブ「tour 2010」に思いを馳せて。

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大分あけましておめでとうございます。
余裕を持って2010年度を振り返る記事を書いたものの、
すっかりお正月モードが冷め切ってからのご挨拶となってしまいました。


そんな私の2011年度幕開けは、鳥肌実。
NHKゆく年くる年ではなく、鳥肌実です。

年末は仕事だった為、かなりライトな大掃除になってしまい、こうなったらギリギリまで諦めないぞと片付けに燃えていました。
本棚を整理していると、町田康「屈辱ポンチ」が目に止まり、何度も読んでいるというのに冒頭ページを開いてしまう始末。
すると、鳥肌実演じる”田島”が言い放つ「婆の駒」のシーンがどうしても観たくなり、DVDを取り出し、チェック。
(ごめんなさい。観ていない人にはサッパリですね。笑)
ちょっとだけのつもりが、気付いた頃には0時を少し回ったところでした。
バッドを振りかざしながら家電を破壊する鳥肌実と年を越したのです。
いいのです。大好きだから。


2011年は、今までの活動とは少し形の違った作品も公開予定です。
どんな気持ちや、どんな人と出会うのだろう。
今年も宜しくお願い致します。

ヤマダサヲリ