切り絵みたいにハッキリとした月が浮かんだ日。
我が家のねこが、天使になりました。
むかし、
どこかのだれかに捨てられてしまったこの子は、てくてく、この町へやって来て。
夏の夜、道でふと目が合った瞬間から、わたしたちの「待ち合わせごっこ」がはじまった。
自動販売機へお茶を買いに行く時、
締め切りを終えて深夜の散歩へ出る時、
決まってふらりと現れて、当然のようにいっしょに道を歩き、いっしょに家まで戻る。
コンビニへ行けば、ガラス扉の向こうからこちらを見つめて、礼儀正しく(猫は店内へ入れないというルールを理解したように)待っていたこともあった。
当時、すでに一匹のねこと暮らしていて、
はじめての多頭飼いに不安だったのもあり、迎え入れることを悩んでいたとき。
すこしだけ開けていた窓から、ジャジャーン!と、自ら突入してきた。
そのへんてこでパワフルな姿に、すっかりやられてしまって、晴れて家族となった。
余命宣告を受けてからの日々は、
一秒一秒をたいせつに過ごした。
いままで見落としてしまっていたこと、すべてが愛おしく、別れが迫ってくる世界が憎らしく、
とても心が忙しかった。
はやく家に帰るようになった。
「おはよう」と「おやすみ」と、「今日もありがとう」を毎日伝えるようになった。
触れたいものに、触れるようになった。
決まったリズムで、家族が集まるようになった。
父と、たくさん話をして、お酒を飲むようになった。
じぶんの中で停止していたある一体が、もう一度、息をはじめた。
いつだって見守るように生きていてくれた。
ここからは、与えてもらった全部を抱いて、わたしが頑張る番です。
だから、何があっても負けることはありません。
ほんとうにありがとう。
また会おうね。
2015.01.15
BGM: water water camel 「海沿いの家」
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