夢を見た。
遠くの街に居る人が、私のすぐ隣に居た。
狭い部屋で、ふたりで寝そべって、天井を見ながら楽しい会話をしていた。
手は少しだけ冷たくて、頬はほんのり温かくて、唇は柔らかかった。
幸せそうな顔をしていた。自分でも驚いてしまうほどに。
たぶん、きっと。
夢というのは不思議なもので、起床して時間が経つのと同時に、徐々に消えていってしまう。
忘れてしまうのが嫌で、物凄く寂しくて、目覚めてからすぐに紙とペンを取り、必死に内容を書き留めた。
午後になって、荒い字で書かれたそれを読み返しても、もう断片的にしか思い出せない。
やはり、そういうものだ。
だからこそ、美しいのかな、夢は。
キャッキャと笑っていた理由も、
口ずさんでいた歌も、
服の色も、
砂がこぼれ落ちていくように忘れてしまったけれど、
確かに、私は、しあわせだった。
満たされていて、報われたような気持ちで、安らいでいた。
せめて、あの夢の匂いを忘れないように、絵を描いた。
また会えるといいな。
(2012.04.07 絵「夢の匂い」)
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