2013/01/21

水の線のなぞり方


朝起きて、一杯の水を飲む。

ひんやりと喉を通って、心のちかくを過ぎて、スルスルからだの中へ降下していくのを感じる。
この感覚は、「人から言葉を受けた時」に似ている。
ハッとした時、うんうんと深くうなずいた時、文体の欠片ひとつずつが自分に溶けて、馴染んでいくその瞬間に似ていると、冬の朝に思う。


たくさん笑う日々だ。
たくさんお喋りをして、たくさん考えて、ちょっぴり泣きもするし、たまに迷子になるけれど。
人間らしく生きている。

だいすきな人達と、
おいしいご飯をはんぶんこしたり、乾杯をしたり、
くすくすとふざけてみたり、同じ一点を見据えて会話をしていると、
数年前までの私は、こういう熱のかよった輪の外側で、いろんなことを勝手に遠退けて暮らしていたのだと気付く。
目を閉じれば、いつも、会いたい誰かの顔が。
暗闇に落っこちても。
懐かしい惑星が見えてきます。

言葉を発して、言葉を受ける。
本質的なエリアを見せるのは、いつだって勇気が要るけれど、
それと同じ分、ううん、それ以上に手を伸ばしてもらっている。
開け放った扉が震えているのを、なだめるみたいに。


陽の光をうんと浴びた水の線を、指先でなぞるようにして、歩いていく。



BGM: Sigur Rós 「Ekki múkk」

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