2011/11/26

大きな夜のこと


― 耳が塞がってしまうほど 口が溶けてしまうほど
足が斜塔になってしまうほど いつも考えている
肩が鎧になるくらい 目が土星になるくらい
腹が閃光を放つくらい いつも考えている
 
どうやったら君が笑うかなんてのは 永年継続していく問題で
6の括弧が今日も埋められないのさ
問6の括弧が今日も埋められないのさ
 
胸が裏返しになるほど 肘が氷を砕くほど
髭が芝生になるほど いつも考えている
頭を抱きしめるくらい 背中が羽になるくらい
腰が粉末になるくらい いつも考えている ―
                         (富樫洋介さん「問6」より)



冒頭の文章は、
札幌を拠点に活動している富樫洋介さん「問6」という曲の一部。
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●富樫洋介さん WEB SITE
http://yousuketogashi.jimdo.com/
(「音楽などなど」から、歌詞も閲覧可)
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昨年の夏、たまたま足を運んだライブで初めて聴き、その瞬間から忘れられずに過ごしてきた。
富樫さんの声・音はもちろんの事、”どのように日々暮らしていけば こんな言葉が生まれるのだろうか”と、心をギュウッと掴まれた。
一言も聞き逃さないようにじーっと耳を傾けたり、
メロディーと一緒に頭の中で字を追おうとしたり、
音楽に「正しい聴き方」なんて括りは不要なのかもしれないけれど、あの数分間を書き表すならば、たぶん、そういう事だろう。


そんな憧れの富樫さんと、先日、お会いする機会がありました。
打ち合わせというか、お顔合わせというか、こんな日が来るだなんて。
あの夏の夜、彼の音楽に惹き込まれていた私は、考えもしていなかった。
まだこの分野での制作を始動して間もなかったし、
何らかの媒体でご一緒する事が出来る未来なんて、望むまでに自分が達してもいなかった。
出会いは、不思議だ。

世界各国のビールを取り扱っているお店へ案内して下さり、乾杯。
お酒は大好きだけれど、初めて目にする名前のビールがずらりと並んでいたので、
富樫さんにセレクトしてもらいながら、グビグビと。
ドイツビールのベックス、とても美味しかったなあ。

色々な話をした。
大好きな「問6」についてや、制作の色々や、本当に沢山の事を聞かせてくれた。
そして私も、なかなか人に言えずに居るような事まで、スラスラと話せてしまった。
そして”初対面なのに 初対面だから”といったような考えは、この夜で パチンッ と消えていった。
きっと、真っ直ぐに向き合ってくれている姿勢が伝わってきたからだ。
人は、ゆっくりと積み重ねて編み込んで関係の糸を実感したりするものだし、
過ごしてきた時間へ巻き戻して入っていくなんて事は出来ないけれど、
”初めの「0から1への距離」を、こんなに開放出来る相手も居るんだな”と思った。
そういう素敵な空気を身にまとっている人とは、会う度に、1から10へ・10から100へと、進むスピードも、きっと速いのだろう。
そんなふうに考えると、これから先に待っている出会いが楽しみになったし、
「こういう接し方が出来る人で在りたい」と思った。

任せてもらえた事を心から嬉しく感じ、
富樫さんの熱を確かに感じ、
大切に協力をしていこうと思った。


今年は、友人・知人・大好きな人を突然に亡くし、
時間だとか、蓄積されてきた事だとか、そういうものに対して、諦めに似た感情を抱いていた日々が多かった。
けれど、
友人が最後に書いた日記は、キラキラした絵文字たちと一緒に、まるで何事も無かったかのようにウェブ上に残っていて、「今度会ったらあの人に好きって言おうかな」との言葉があり、自分にとって”今度”へと気持ちの繰り越しをする際に”今”へと変えなければ と思い止まったり、
今回のように大きな出会いで、”もう一度、人を信じてみよう”と思ったり、
大きな機会・大きな時間・大きな人が訪れた。

こうして、始まりや終わりに向き合うのは、
今だから、今の自分だから、必要だったのかもしれない。

出会いは不思議で、大きい。

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